意外とよく頂くご質問なので、ここにまとめておきたいと思います。もっとも、結論から述べてしまいますと、合同会社で宅建業免許を取得し、不動産業を開業することは当然可能です。
株式会社と合同会社の違い
合同会社でも宅建業免許は取れるとして、では株式会社と合同会社、何が違うのだろうと疑問に思われる方もいらっしゃるかと思います。
この二つ、もし宅地建物取引士の資格を持つ人がお一人で起業されるときは、設立自体のコストを除いてほとんど差がありません。
資本と経営の分離
一応違いに触れておきますと、株式会社は資本と経営が(原則)分離しているタイプの法人形態なので、お金を出す人(株主)と経営する人はそれぞれ別扱いになります。多くの資本家からお金を集めて、それを経営のプロが運用して利益を出すというイメージです。
一方、合同会社は資本と経営が(原則)一体となるタイプの法人形態なので、お金を出す人がそのまま経営も行うというスタンスになります。どちらかといえば、株式会社より小さい組織、知人や親族経営等で利用しやすい法人形態といえます(最近は大きな会社でも合同会社を選択することもありますが)。
1人社長兼専任宅地建物取引士の会社では、違いがほとんど無い
もっとも、株式会社でも、設立当初は資本金を出す人がそのまま会社の社長(経営者)となるケースがほとんどですから、所有と経営の分離という面では、違いがほとんどなくなってしまいます。
そのため、これから起業するという場面においては、株式会社と合同会社では
- 商号に「株式会社」と入るか「合同会社」と入るか
- 設立コスト
以上2点くらいしか違いが生じないのが現状です。設立に必要な日数も、1日変わるか変わらないかといった程度です。(ほかに機関設計の自由度や役員の任期などに差がありますが、ここで触れてしまうと長くなるため、省略します)
合同会社から株式会社への変更は可能?
これも結論から述べてしまいますと、一定の手続きに従い(登記に関する登録免許税も支払うことで)組織変更が可能です。もっとも、既に動き出した合同会社を株式会社に変えることは、様々な手続き上の面倒が伴います。
多くの人から出資を募り、不動産会社を大きくしていきたい。設立前の時点でそんな予定があるなら、最初から株式会社で作って宅建業免許を受けておくほうがよいでしょう。
合同会社と株式会社、不動産業開始までのコストの違い
株式会社と比較して、どれくらい設立コストに違いが生じるかは、概ね以下の表のとおりです。
合同会社 | 株式会社 | |
定款の印紙代 ※ | 40,000円 | 40,000円 |
定款認証の手数料 | なし | 52,000円程度 |
登録免許税 | 60,000円 | 150,000円 |
宅建業免許の法定手数料 | 33,000円 | 33,000円 |
合計 | 133,000円 | 275,000円 |
※ 定款を電子定款の形式で作成する場合は、印紙代がかかりません。 上記の他、不動産業の営業開始までには供託金または保証協会等への加入費用がかかります。 |
合同会社を設立する場合、会社の根本規則となる「定款」を公証役場で認証してもらわなくとも設立が可能なため、まず第一に定款認証の手数料の額だけ差が生じます。
また、法務局へ設立登記を行う際の登録免許税も、合同会社と株式会社で90,000円の差があります。これらの合計として、約140,000円程度の差額が生じることになります。
会社が設立した後の宅建業免許の申請においては、株式会社でも合同会社でも手続きは全く同じと言ってもよいくらい変わりません。
不動産業の起業でお悩みの方へ
弊所にご依頼いただく方の中には、合同会社を設立して宅建業免許を受ける起業家様も、ここ1、2年でだいぶ増えています。宅地建物取引士資格を活用して独立、不動産会社の設立等をお考えの際、どちらの会社形態を選択するべきかお悩みの方は、一度ご相談いただければと思います。