既に何らかの事業を営んでいる会社において、新たに不動産業を取り扱う場面での宅建業免許の申請は、行政庁からいくつかの確認がなされることがあります。
※なお、専任の宅地建物取引士の兼業については別ページにて紹介していますので、そちらをご参照ください。
新規事業として宅建業(不動産事業)を追加する際の注意点
まず前提として、不動産業以外の事業で営業を継続している会社においては、これから始める宅建業が兼業であり、既存事業が本業というイメージの場合も多いかと思います。が、ここでは宅建業免許と兼業の関係を説明する都合上、兼業というのは不動産業以外の(既に行っている)事業のことを表すとお考えください。
1.免許申請時の決算書について
これは別のページ(宅建業免許と決算書)で詳しく説明していますが、宅建業免許の申請に際して提出する決算書の中に、不動産業を行っているような内容が記載されていると、無免許で宅建業を営業していたことになるため、新たに免許を受けることができません。
より具体的には、自社の土地を売却した際にそれを利益として計上したり、不動産に関連して仲介料的な収益が上がっているなどが読み取れる、などが該当します。
決算書については、申請に添付すればそれでおしまいというものではなく、内訳で不明瞭なものがあれば細かく指摘されることが多いので、これから宅建業免許の取得をお考えの会社様におかれましては、決算書の内容に誤解の生じないように作ることが求められます。
2.宅建業を営む事務所について
宅建業(不動産業)をこれから事業に追加して営もうとする場合、たとえば兼業(宅建業ではない事業)が事務的なものであり、会社が賃借しているフロアが事務スペース的なものであれば、その事務スペース内で新たに不動産業を開始することになるため、宅建業者としての事務所要件で指摘が入る可能性は低いです。
一方、これは比較的ご相談を頂くことが多いパターンですが、兼業(宅建業ではない事業)が飲食店などであり、本店の場所として賃借しているフロアが店舗使用を主とする作りになっていると、そこに宅建業としての事務所の機能を追加するということが難しくなるため、原則そのままでは宅建業免許の申請ができません。
このような場合、店舗スペースとは別の出入り口などから、宅建業の事務所としてしか使用しない独立した部屋に入れる構造にするなど、レイアウトの変更で対処していくことになります。
なんとなく、簡易のパーティションで区切るだけといった構造では申請を受理してもらえませんので、不動産業の事務所の独立性については注意しておくほうがよいでしょう。
3.宅建業に従事する者
宅建業免許の申請においては、宅地建物取引業に従事する者の名簿を提出することになります。この名簿に記載するのは、あくまで宅建業に従事する従業員等ですから、兼業(宅建業ではない事業)のみに携わる営業職の方などは、列挙する必要がありません。
勘違いの多くおこる部分ですが、専任の宅地建物取引士は、宅建業に従事する者5名のうちに1名含まれる必要があります。従って、たとえ会社に1.000人の従業員がいたとしても、宅建業以外の事業に従事する者がそのうち995人を占めるのであれば、設置すべき専任宅地建物取引士は1名だけで済むことになります。
なお、この宅地建物取引業に従事する者の名簿ですが、代表取締役や宅建業に携わる役員、専任宅地建物取引士は必ず数に入れることを求められます(ほとんどの都道府県がそのような扱いかと思います)。
もし代表取締役が他の会社の常勤役員を兼ねる、あるいは他社の代表取締役を兼ねる場合、そのままでは宅建業免許の申請が受理されないため、別に代表取締役の代わりとなる政令使用人を設置することになります。
なお、政令使用人は専任宅地建物取引士が兼ねることができますので、社員の少ない会社などでは、政令使用人兼専任宅地建物取引士として責任者を1名設置するケースが多いです。