建設業者として施主や元請企業などから建設工事を受注している会社で、新たに建売住宅の販売も始めるときは、宅建業免許が必要になるでしょうか。
結論を先に述べてしまうと、この場合、不動産業を営むことになるため、予め行政庁から宅建業免許を取得しておかなければなりません。
建設業許可と宅建業免許の要否は異なる
建築一式で建設業許可を受けている会社が、自社で設計や建築を行った後、建売住宅として販売するというケース。
実はこの行為だけを取り出してみると、他者から建設工事を請け負ったわけではありませんので、建設業許可が必要な行為にはあたりません。
そのため何の許可・免許も不要で取引を行えてしまいそうにも思えるのですが、このケースでは建築した建物(不動産)を「業」として売買することになるため、建設業許可は不要でも宅建業免許は予め取得しておかなければならないことになります。
建設会社の登記上の本店に注意
建設会社が建売住宅の販売などを新規事業として取り扱うことになるこのケース。宅建業免許の申請を行うときは、会社の登記上の本店所在地にご注意ください。
建設業許可では、たとえ登記上の本店所在地が実際に営業する場所と異なる場合であっても(たとえば便宜上、代表取締役の自宅になっていたり、自社の持ちビルの1棟となっているなど)、実際に営業所とする場所を主たる営業所として届け出ることが可能なので、特に問題は生じません。
しかし、宅建業免許では登記上の本店所在地は宅建業上も本店とみなされます。(詳しくは宅建業者の事務所 本店と支店をご参照ください)
このため、登記上の本店所在地においても宅建業の営業所としての要件や専任宅地建物取引士の設置、供託金または保証協会の分担金等をクリアしなければならず、手続き的には大変な手間・面倒が伴います。
管轄行政庁が複数に分かれると手続きが煩雑に
仮に上記のような本店の要件をクリアできたとしても、建設業上の主たる営業所が宅建業上の本店と異なってしまうことになります。
この場合、登記上の本店と建設業法上(事実上)の本店が異なる行政庁の管轄になってしまうことから、申請先の行政庁が分かれる事態に陥ることもあります。
管轄行政庁が分かれると、役員や責任者が交代した際の変更届や許可(免許)更新の手続きの再、折衝先・提出先の行政庁が2カ所になってしまいますから、手続きの面倒は倍近く増えてしまいます。
もし建設業許可と宅建業免許で行政庁が異なってしまうケースでは、予め登記上の本店移転を行うなどして、建設業許可と宅建業免許を同一の本店とできないか、十分に検討しておくほうがよいでしょう。
もし建設業許可や宅建業免許、建築士事務所登録など複数の許可・免許の取得となる場合は、当事務所でもご相談の上で最適解をご提案することが可能です。お困りの際にはお電話・メールにてご相談ください。